近年、ホルモンの一種である「オキシトシン」が自閉症や愛着障害、更年期障害などの治療用途として注目を集めています。これらの治療への使用は研究段階であり、自閉症などへの投与は薬事法ではまだ認められていません(禁止ではありません)。
現状のインターネットでは情報がまだ錯綜している傾向も見受けられます。当サイトでは改めてオキシトシンの情報を整理し医師の冨田雅乃先生監修の基、冷静な情報発信に努めています。
オキシトシントピックス
- 発達障害 子どもと家族を“地域”で支える
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オキシトシンとは全く関係ないのですが、お問い合わせでは発達障害に関連したことをいただく機会が結構あり、NHKの首都圏ネットワークで表題の特集を行っていたのでご参考までの紹介です。
発達障害に対応する専門的な医師が不足する中、山梨厚生病院、小児科の池田医師が病院だけでなく地域一丸で取り組む姿勢の特集でした。
発達障害の方の視点をパズルのピースにたとえる例なども耳にしたことがありますが、問題行動の対処なども細分化(ピース化)し、家族だけが対応するのではなく、様々な立場の人や視点によって新たな対処法が増えてきそうという印象はありますよね。
残念ながら池田医師が在籍する山梨厚生病院のホームページでは発達障害の検索では何もヒットしなかったので、発達障害への取組みと共にインフォメーションも整備されていくと良いですね。
ホームページ管理者の末端ではありますが当サイトでもローカル的でも情報があれば発達障害のページでもご紹介していきますから、皆さんの中で有益で世に広めたいことがあればお気軽にお知らせください。
■NHK:首都圏ネットワーク「発達障害 子どもと家族を“地域”で支える」
※時期によってはリンクが切れるかもしれません - ストレスと友達になる方法
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有名なプレゼン番組でおなじみのTEDにてスタンフォード大学 心理学者 ケリー ・マクゴニガルさんがストレスの話の中でオキシトシンが登場していたのでご紹介します。
ストレスは完全悪な印象の方も多いかもしれませんが、こちらのお話ではストレスと上手く付き合ってプラスにしようという内容。オキシトシンをストレスホルモンとも形容していますが「オキシトシンが心臓の細胞を再生し、ストレスダメージを治す」といった発言も見られます。
単純なストレスでは死亡リスクが30%増などの話と共にオキシトシンが関与してくる「人への思いやりに配慮をした行動が多い人」にはそのようなリスクの増加が見られない報告がされていてオキシトシンが長生きの秘訣とも感じられます。
もちろん厳密な臨床という雰囲気ではありませんし、オキシトシンを投与云々といった感じでもありませんが一つの生き方の指針として人に優しくすることで自分にも相手にも良い効果が期待できるのであれば意識的にそのように行動していくのはなんら悪いことではありませんよね。ネットスラングでしばしば見かける「優しい世界」にもオキシトシンは関わっているのかもしれませんね。
- 禁煙やアルコール依存症とオキシトシン
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麻薬関係に続き米国ノースキャロライナ大学、豪州アデレード大学でニコチンやアルコール依存症でもオキシトシンの臨床試験が行われていることを冨田先生より伺いました。従来は禁断症状(離脱症状)が出た際にはロルファンと言う薬が処方されていたそうですがオキシトシンのほうが有用性が高い報告がされているそうです。
先生ご自身もオキシトシン服用後に自然な形で喫煙、アルコール摂取が減った経験則をブログで述べられていますし、冨田先生が担当した患者さんの症例でも服用1ヶ月ほどで気持ちの変化、3ヶ月頃から飲酒量が減ってきた事例を聞かせていただきました。
ストレス自体の減少も関係しているかもしれませんし、そのストレス減少もオキシトシンがアシストしているのかなど心因関係は医学的、科学的にハッキリさせるにはなかなか難しいものではありますが従来の薬に比べ副作用リスクが低いことは度々言われていますのでしかっりとした安全性で気軽な選択肢としてオキシトシン候補に挙がる時代があってもいいかもしれませんね。
- 麻薬の依存症とオキシトシン
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オール英語で読むのにハードルが高いのですが覚せい剤やコカインなどのいわゆる麻薬の依存性に対してオキシトシンが阻害性を持つ見解を示した内容となっています。主にマウス実験によるレビューのようです。
時事的にも改めて違法薬物へ注目が集まっていますがそれらの回復メニューとして医師立会いの下なら一定の安全性は確立できるでしょうし、精神系の問題は社会が先進化すればするほど問題になってきているような気もするので、こういうことはどこか大きな機関で大規模な臨床はあっても良いような事例じゃないかと個人的には思っています。
■Acta Pharmacologica Sinica(内容全文は左メニューのPDF)
- オキシトシンと更年期に加筆
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閉経以降に女性特有に見られる症状とオキシトシンの関係について加筆しました。
男性医師では理解しづらい点や監修の冨田医師も実践した上での見解ですから同様の症状でお悩みの方はご参考ください。
- オキシトシンの投与と円滑な対人関係
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今回は冨田先生より記事並みのコメントをいただいたので別掲でご紹介します。自閉症の方の物事の捉え方やその後のオキシトシン補充療法について先生なりの所見となっています。
自閉症患者へのオキシトシン補充療法によって一時的にご家族は振り回される可能性があるとのことですが、これを成長過程の一つと見られているようです。
オキシトシンの副作用で精神の安定とは逆の作用もありえるとの情報はしばしば耳にしますが、臨床では長期的な計測はしてないかもしれませんから、こういったものも一時的なものとしたら医師だけではなく家族として日常的に接しているからこそ見出せる見解で貴重な参考要素といえるかもしれません。ぜひ、ご一読ください。
- それぞれのオキシトシンの持続期間
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最近はオキシトシンの製剤の種類も増えてきて監修の冨田先生より、それぞれの特徴と持続期間に言及した論文概要を教えていただいたのでご紹介します。
経口BLA錠剤:約1時間でプラズマオキシトシンの上昇をみとめ、8~12時間持続する。
舌下錠剤:15~30分で上昇。持続時間は4時間未満。
点鼻薬:効果迅速だが持続時間は非常に短い。
以上の製剤の特徴を理解して投与を考えることが必要です。それぞれの特徴が違うようですね。特徴の理解が重要でしょうから改めて個人輸入などの安易な利用には注意が必要です。特に舌下タイプは粗悪品が出回りやすい傾向が強いので注意です。最近ではオキシトシン分泌刺激剤というのもあるそうですが先生的には疑問を持っているそうです。
参考論文
Indian J Endocrinol Metab. 2011 Sep; 15(Suppl3): S156–S161. doi: 10.4103/2230-8210.84851 PMCID: PMC3183515 The orgasmic history of oxytocin: Love, lust, and labor Navneet Magon and Sanjay Kalra 1 Author information ► Copyright and License information ► - オンライン病気事典「メドレー」
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オキシトシンとの直接的な関連は無いのですが、様々な病気の概要について「医師がつくる病気辞典」というコンセプトで「信頼性のある正しい情報発信」という当サイトと共通性を感じたのでご紹介します。
インターネットはアフィリエイト広告などで利益を得たいがためだけに病気など真偽が重要な要素においても安易な文章掲載が多々見受けられますのでご注意ください。当サイトのオキシトシンの情報は冨田先生の監修や情報提供を受けて正しい発信を心がけています。
メドレーのサイトでも確認時では333人の医師が病気のデータベースの作成に関わっているようですから、何かの病気で困った際には一つの指針として参考になりえるかもしれません。オキシトシンの情報はまだ従来の出産関係のみの記載にとどまっていて精神系への言及はされていないみたいですが今後の充実に期待したいですね。
- 食事後がオキシトシン発生のチャンス?
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夫婦仲に言及している記事なのですが食事後に副交感神経が優位になりリラックス常態になりやすいためオキシトシンも分泌しやすいとの見解を心理士の方が述べています。
食事後の積極的な会話・スキンシップや一緒に皿洗いなどを円満な夫婦関係の一助として提案しています。独身や気持ちの落ち着かない方などは食事後によりリラックスしやすい環境を構築することで日ごろのネガティブな要素を軽減できるかもしれませんね。
- オキシトシンと乳がん
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冨田先生のブログでオキシトシンが乳がんの治療に利用されていることが触れられていました。
イギリスやイタリアの文献に拠るところで「発生の予防」「乳がん細胞増殖の抑制」「治療薬:タモキシフェンの効果を高める」などが言及されているそうです。
今のところオキシトシンの副作用で重要視されているのは妊婦さんだけですから引き続き研究解明が期待されます。